フラッシュバック 〜この瞬間を大事に!〜

ここ最近の生活習慣が乱れているせいで、ちょっとの昼寝のつもりが、夕方まで寝てしまった。
起きると、もう夕方、昨日母と飲む約束をしていた。
約束の時間まであと20分少々。急いで準備をして家をでなくてはと、
花粉症で詰まった鼻をすすりながら、腫れぼったい目を冷水で清めるために
洗面所に向かった。5分ほどで支度を終えて家をでた。

今日は春分だが、昨日からの雨もあり気温も低く肌寒い日だ。

時刻は夕方6時、小雨がふるなか駅に向かうため、
線路下の一本道を寒さに震えながら足早に歩いて行く。
この時期この道は、晴れていれば高校の校庭に面しているので、
テニスをしている学生を目にすることができるが、今日は人っ子一人いない。
10分ほどで目的の居酒屋、幸楽で母の到着を待つ。
店の中は、春分の日で、祝日の事もあり、いつもより賑わっていて、
ほぼ満席で5分ほど席が空くのを待つことになった。

ほどなくして、席に通されると、お店の女将さんが注文を取りに来た。
とりあえず、ビールだけを頼んだ。
そして、ほどなくしてビールとお通しの枝豆が運ばれてきた。
枝豆をあてにチビチビとビールを飲みながら母を待つ。
次第に退屈なのと、周りは心地良さげに酒を飲みながら談笑しているのが聞こえて、
一人で待つ気まずさが少しずつ増してきた。
特に、見たいわけどもないが居たたまれなさからスマホを取り出し
ニュースアプリを開く。

しばらくして、母が到着をして席についた。
席につくなりホットウーロン茶を注文した。
すると、すぐさま注文の品がでてきたのである。
頻繁ではないが、何度も母と二人でこのお店に来ているので、
いい加減覚えたらしい。
特に母親の方は。料理とお酒が揃い飲み始める。
母はいつものように『兄は〜、弟は〜、妹は〜』と近況報告を始める。
話を聞きながら、『あ、そう、それで、そうなんだ』と、
相槌はうつがあまり面白くない話なので、流して聞いてしまっていた。
話は最近、亡くなた母の飼い猫の話になった。
母はまだ、猫の死から立ち治れず体調も崩していた。
時折、亡くなった猫がフラッシュバックして、何気ない日常の中での白昼夢のような
体験で、飼い猫を思い出しては悲しくなるのだそうだ。

そんな話を聞きながら、自分は今、母といつものように何気なく飲んでいる、
この風景がいつか母が亡くなった時、フラッシュバックして、
悲しみに襲われるのだろうかとふと考えた。
その瞬間、いまこうして普通に、居酒屋でただいつものように飲んでいることが
大切な時間なんだと感じた。
母が、一生懸命、自身や兄弟の話をしているのを、
話を聞き流し一緒に飲んであげているだけで親孝行だなんて、
心の中で思っていた自分が、なんて人生の大事な瞬間を無駄に
過ごしていたのだろうと感じた。もっと、母とたくさん話すことがあっただろうと、
亡くなった時に思わないようにこうたまに飲む時は、
もっとこの瞬間を大切に使おうと思った。


こう思った後は、もっとしっがりこの瞬間を焼き付けよう、
楽しもうといつもよりちゃんと話を聞いて、いつもより楽しく会話を楽しめた。
いい年をした、大人が気づいた大事なこと。この体験をこれからも大事にして、
人と接するときは一期一会とは、よく言うが、
本当にその通りだと納得できた体験だった。

これからは、もっと母を大事にしていこう。