夢で見た奇妙な出来事



 昨夜見た夢のできことの話をしよう。昨日、床に着いたのは、たしか二十三時頃だったと記憶している。眠る前までの数時間は読書をしていた。読んだ本は、三冊。茂木健一郎氏の脳を活かす仕事術「 わかる」を「 できる」に変える、メタ思考トレーニング発想力が飛躍的にアップする34問、細谷功氏。道は無限にある、松下幸之助氏。

 久しぶりの良作揃いの本だったので、眠らずに全て読みたかったが、「 道は無限にある」の本の途中で、渋々床に着くことにした。なぜなら、前日、夜中に起きてしまってから、すぐに寝れないのでネットをしだしたら、頭がより冴えてしまい、結局朝まで眠れずに睡眠不足になったからだ。だから、昨夜は本を読んだ興奮が冷めやらないまま、さすがに二日連続で寝不足はダメだと、仕方なしに床に着いたのだ。

 しばらくは、本を読んだ余韻から頭の冴えを冷まそうと、意識を呼吸だけに集中して、寝ながらのマインドフルネスを始めた。そして知らないうちに眠りへと誘われた。

 異変は眠りに入って少し経った時から始まった。まず始めは花粉症の症状で鼻が痒くなり、寝苦しくなってくる。何度も鼻を摘み、鼻の中が痒いのを感じながらも起きることはなかった。

 そして、いつしか鼻の痒みが収まった頃、私は夢を見たのである。その夢は、どこかの病院のような施設の廊下にベットのような物が置かれていて、私が寝かされている。寝かされているのは、私だけでなく、私の足元にも他に人が居る。不思議なのだが、その夢の病院内のベットで横たえた私が目を開けて確認したわけではないのに、確信を持って居ることを感じたのだ。

 院内は、真っ暗、これは多分私が夢のベットで眠っていて、目を開けていないからそう見えているようだ。そんな暗闇の中から、女性の看護婦が二人、私に近ずいてくる。
 
    「 これが、例の噂の患者?」などと、同僚の看護婦に言う。
 「 わぁ、本当だ、本当に足を上げている。」
 「 この足の大きさじゃ、スリッパは無理ね。バスケットシューズとかがいいかしら」などと、雑談を始めるのだった。

 当の私と言うと、私はベットに横になっていて、何故か左足を奇妙に上げ、揺ら揺らと揺らしながら、まるで足だけ夢遊病にでも掛かったように、独りでに動いているのを感覚として認識したまま、寝ているのである。つまり、左足を除いて、身体は寝ているのに、脳は起きていて左足が勝手に動いているのを感じているのだ。

 そして夢の中の睡眠中のことであるはずなのに、まるで起きていて誰かに足を持ち上げられて円を描くように動かされるのを、感じているような鮮明さでわかるのだった。
 勝手に足が独りでに動く。身体の一部のコントロールを奪われながらも、脳は起きていて何が起きているのかを明確に感じている。それは気持ち悪い恐怖な体験でしかなかった。

 「 なんで動いているかな。心理的な問題?」
 「 わからないけど、それは専門家に任せるほかないよ」と、看護婦の話が聞こえる。
 
    そして看護婦の一人が私の左足を掴み、足の動きを止めようとする。それでも足の動きは止まらずに、看護婦は悲鳴をあげる。

 その瞬間、私の寝室のベットの脇に置いてある物置から、何かが崩れ落ちた音がして、私は現実の世界に戻ってきた。

 その瞬間、現実世界の私は、今まで夢の中で感じてきた恐怖が、現実までも侵食して、一気に部屋の温度が冷やされたように寒さに震えて、背筋が凍り、鳥肌が立つのを感じた。そして、恐怖のあまり頭では起きて現実世界にいることは、わかっていたが、身体をピクリとも動かす勇気が持てなかった。

 それから、しばらく経った。体感的には、十五分ぐらいであろうか。まだ、寒気と鳥肌になっているのを感じてはいたが、次第に身体から力が抜けてきて、それと同時に恐怖も徐々にではあるが、引いていくのを感じた。

 恐怖が抜けると、冷静さを取り戻し、懸命に夢のことを整理し始めた。
 夢の最中は気づかなかったが、現実世界に戻って感じたのは、私があの奇妙な夢の世界に行ったのが、今回が初めてではないという、無意識的な直感として感じて気づいた。

 何度も左足だけが、勝手に動く過去の映像のようなものが、脳内で瞬間的にフラッシュバックされた。只々、気持ち悪い、なんだこの現実の世界に戻ってきたのに、過去にも何度も同様な経験をしたという確信。

 夢の中の世界は、どこか異世界であり、私の魂だけがそこに飛んでいき経験してきたことなのか。それとも現実世界に未来から人間か、はたまたエイリアンか実験で足を弄られていたのか、さもなくば、幽霊の仕業で憑かれていたのかなど、様々な可能性を考えているうちに、冷静さを取り戻していった。

 そうしてようやく、身体を動かすことができるようになり、静かに寝返りをうった。
 これが昨夜見た夢の出来事である。

 夢の中の体験を鮮明に覚えていること、触感としての感覚が残っていること、何度も同じことを経験してきたという、現実世界での直感的な確信。

 今まで感じてきたことのない恐怖を感じた夜であった。そして後味が悪い夢だ。また、いつか同じ夢を見るかもしれない。そして、その時は、この日記が証拠になる筈だ。

 この夢から始まった結末はまだわからない。どうなっていくのだろうか。