昼過ぎに起き出して遅い朝食を済ませ仕事に取り掛かろうとするが捗るきがしない。頭が働かずに成果がでなそうなので、地元の図書館で借りた本の期限が今日までなのを思い出し、先に雑用を済ませてしまおうと返却しに向かう。
到着するなり入り口すぐにある返却の窓口で順番を待つ。先客は一人だけですぐに終わりわたしの順番になる。
「返却をお願いしますと」図書館の職員に伝え、返却の作業を待つ。
20歳前半ぐらいで黒髪を後ろで結いた少しふっくらしていて柔和な印象の女性が、なれた手付きで返却の作業を始める。
本を一冊づつ丁寧にパラパラと流れるように一定のリズムでページをめくり、本の状態を確認していく。1冊、2冊と終わり、3冊目に差し掛かった時、何やら指を止めて本の中から何かを取り出す。
「こちらは最初から入っていたものですか?」と聞かれ、職員から差し出されたものを確認する。 でてきたものは油取りの紙で、借りているあいだ付箋かわりに使っていたものだ。わたしが使っていてものだが、美容品を40歳を超えたオジさんが使っていたという恥ずかしさと、本の半ばで入ったきりになっていて、付箋として使っていたなら、そこまでしか読んでないことはわかるだろうということを瞬時に感じでしまい、「知らないです」と、つい嘘を付いてしまった。
最初から入ったいて、最後までその本を読んでいたら入っていることは知っているはずなので、とっさに付いたその嘘も、どちらにしてもわたしがその本を読み終えなかったのは丸わかりだ。 なぜ、とっさにあんな嘘を嘘をついてしまったのだろうか。よく考えたら油取りの紙ぐらいたいしたものでもないのに嘘を付いた。
この様な時にほど、自分がどんな人間かがよくわかるように思う。若い女性を前に恥をかきたくなかったのだ。いいカッコして自分の弱さを隠したかったが、全く隠せなかった。
単に本を最後まで読みきれなかったことさえも、堂々と晒せない気弱さが自分にあることをこの経験でよく知らされた。
職員は特に、このことで表情を変えずに特段に何も感じていないようだったが、嘘をついたわたしの方は、嘘をついてしまったことの気まずさで一杯になった。
とっさに付いてしまう小さな他者を傷つけない嘘は、自分を傷つける。それは対した傷にはならないが、とっさに付いてしまう嘘に、自分の至らなさをしって傷つく。
しかし、その傷がなかったら自分の至らなさを知ることはできずに何も学べない。
生きていればとっさに付いてしまう嘘はいくらでもあり、嘘を付くことに慣れてしまい、自身も何も感じず傷つかないようにはなりたくない。
傷つくことに慣れずに、とっさに付いてしまう弱い自分を克服して、次から嘘を付かないでいられる心の強さを手に入れることを学べれば、ずっと同じ嘘を永遠と付き続けるより良いと思う。
嘘を付いてもすぐに忘れてしまうことはよくあるが、時には立ち止まって嘘に隠れた自分の弱さを知り、傷つきながらも心を強くしていき、少しでも嘘を付かないで生きれるような強さを目指したい。